アシュタンガヨガは一般的なヨガよりも運動量が多く、「達成感や汗をかくことで得られる爽快感が気持ちいい!」と、今注目を集めているヨガです。
そこで今回は、アシュタンガヨガの基本のルール、特徴や効果、代表的なポーズなどをわかりやすくご紹介します。おうち時間を自分磨きの時間にしたい方、通常のヨガでは満足できなくなってきた方はぜひチェックしてみてください。
INDEX
アシュタンガヨガとは?

アシュタンガヨガは、いくつかあるヨガの伝統的な流派の一つで、正式名称を「アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガ」といいます。
近代のヨガの発展に大きな影響を与えたとされるティルマライ・クリシュナマチャリア師によって基礎が築かれ、その弟子のシュリ・K・パタビジョイス氏によって確立されました。
アシュタンガは「八支則」という意味を持つ言葉で、以下の8つを指します。
1. ヤマ:禁戒
2. ニヤマ:勧戒
3. アーサナ:坐法・ポーズ
4. プラーナヤーマ:呼吸
5. プラティヤハーラ:感覚の統一
6. ダーラナ:集中
7. ディアナ:瞑想
8. サマーディ:三昧
八支則はヨガのポーズではなく、考え方や礼儀、坐法、呼吸法などをまとめたものです。アシュタンガヨガでは、これらをもとにして決められたポーズを順番に取り、八支則の「サマーディ(悟り・至福の状態)」に到達することを目指します。
アシュタンガヨガの特徴
ここからは、アシュタンガヨガの4つの特徴をご紹介します。
◇決められたポーズを順番に行なう
アシュタンガヨガは、順番に沿って決まったポーズを繰り返すのが大きな特徴です。呼吸を意識しながら、途切れることなく全身を使ってポーズを取り続けます。
アシュタンガヨガにはハードなポーズも含まれているため、一般的なヨガと比べると運動量は多めです。「ヨガ=ゆっくりと身体を動かす」というイメージを抱いている方は、想像以上にハードに感じるかもしれません。しかし、しっかり汗をかけるので、終わったあとは爽快感を得られるはずです。
◇ヴィンヤサを意識した呼吸と動き
「ヴィンヤサ」はアシュタンガヨガの正式名称にも入っていますが、その考え方は重要な要素の一つです。
ヴィンヤサとは、呼吸と動きを合わせ、流れるようにポーズを行なうことを意味します。吸う・吐くのリズムに合わせて一つひとつのポーズを途切れることなく行なうことで、集中力が高まるとされています。
◇三点集中(トリシュターナ)を重視する
三点集中(トリシュターナ)を重視することも、アシュタンガヨガの特徴です。アシュタンガヨガでは、「呼吸」「視線」「バンダ」の3要素を重視することで、「動く瞑想」に到達します。
呼吸の基本は「ウジャイ呼吸」と呼ばれる胸式呼吸です。口を閉じた状態で呼気と吸気を同じ長さで行ない、喉の奥で鳴る摩擦音に耳を澄ませて、体の内側へと意識を向けます。
視線は「ドリシュティ」とも呼ばれ、ポーズごとに決まっています。各ポーズで決められた方向に視線を維持することで、ポーズが安定しやすくなるほか、集中力が高まるとされています。
バンダとは「鍵」「閉じ込める」「締め付ける」といった意味を持つ言葉です。お腹の「ウディヤナバンダ」や骨盤底の「ムーラバンダ」など、全身に9種類のバンダがあります。バンダを意識してポーズを取ることで体内のエネルギーが活性化し、身体機能の向上や精神の安定につながるといわれています。日頃からバンダを意識すれば、日常でも効果を感じられるでしょう。
ちなみに、三点を「呼吸」「視点」「アーサナ(ポーズ)」とする説もあります。
講師がいない自主練習スタイル
アシュタンガヨガの練習方法は、講師のいない自主練習スタイルが主流です。自主練習スタイルでレッスンを行なうクラスは、「マイソールクラス」と呼ばれます。
複数の生徒が集まってアシュタンガヨガを行ないますが、全員が同じ動きをするのではなく、一人ひとりが自主練習をし、講師が個別にアドバイスします。自主練習スタイルのため、スクールに通わず動画を見ながら習得することも可能です。
また、インストラクターのリードに合わせて、生徒が同じ動きをする「レッドクラス」を開講しているスクールもあります。このクラスでは講師の動きに沿って行なうため、簡単に感じるかもしれません。しかし、周囲とペースを合わせて行なう必要があるので、初心者には「マイソールクラス」がおすすめです。
アシュタンガヨガの効果

アシュタンガヨガで得られる代表的な効果を5つご紹介します。
◇ホルモンバランスが整う
ホルモンバランスの乱れは、睡眠不足やストレス、運動不足やバランスの悪い食生活などが原因です。
八支則で日常の生活習慣を整えることに始まり、呼吸法や集中を意識するアシュタンガヨガには、自律神経を整える効果が期待できます。ホルモンバランスは自律神経と密接な関係があるため、アシュタンガヨガを行なうと、乱れたホルモンバランスの改善を目指すことが可能です。
◇筋力がアップする
先述したとおり、アシュタンガヨガは通常のヨガと異なる、運動量の多いヨガです。途切れることなく変わり続けるポーズに加え、呼吸法も実践すれば、立派な有酸素運動になり得るとされています。実践していけば筋力アップが期待できます。
◇代謝がアップする
「ダイエットのために代謝をアップさせたい」と考えている方も多いでしょう。実は、代謝は筋力が上がるほどアップします。
ポーズと呼吸法で筋力がついたら、自然と代謝も上がります。通常のヨガで代謝アップを目指すのは困難だといわれていますが、運動量の多いアシュタンガヨガであれば、筋力アップと代謝アップを期待できるでしょう。
◇ストレス軽減
ポーズの流れや視線が決まっているアシュタンガヨガは、自然と集中力がアップしやすく、マインドフルネス効果が期待できます。加えて、ポーズと連動して呼吸を意識することにより精神が安定し、ストレスが軽減される効果も見込めるでしょう。アシュタンガヨガを習慣にすると、日常的にストレスを感じにくくなるともいわれています。
運動自体がストレス解消に効果的なため、一般的なヨガよりも体を動かすアシュタンガヨガは、まさにストレス軽減に適したヨガといえます。
◇柔軟性の向上
アシュタンガヨガを行なうと、血行が促進されて体が内側から温まります。その結果、体の可動域が広がり、柔軟性の向上が期待できるでしょう。柔軟性が高まればポーズが取りやすくなるので、よりアシュタンガヨガを楽しめるようになります。
また、アシュタンガヨガには、体のバランスへの意識が必要なポーズが含まれています。ゆがみの改善や、体幹・背筋を鍛えることによる姿勢改善効果も期待できるでしょう。
アシュタンガヨガの基本ルール
アシュタンガヨガは伝統のあるヨガで、ルールがいくつかあります。伝統を重んじるためのものだけでなく、効果をしっかりと得るためであったり、体調不良を引き起したりしないために定められているルールも。
ここでは、いくつかあるルールのなかでも代表的なものを6つご紹介します。
◇練習前は食事をしない
食後すぐの状態でアシュタンガヨガをすると内臓に負担がかかり、ポーズや呼吸に集中しづらくなってしまいます。体を大きく動かすため、消化不良や吐き気を催すおそれもあります。
練習の2~3時間ほど前は、食事を避けましょう。
◇練習中は水を飲まない
アシュタンガヨガは、体の内側から熱を作り出すことが大切とされており、練習中の水を控える文化があります。また、練習中に水を飲むと内臓が冷え、集中しづらくなるおそれがあるため、基本的に給水は練習後にしましょう。
◇練習前はシャワーで身を清める
ヨガでは、体を清めることが大切です。アシュタンガヨガでは精神的な準備を行なうために、練習前にシャワーを浴びて身体を清めます。心身ともに整えた状態で、練習を開始しましょう。
また、シャワーで体を温めることで柔軟性が高まり、ケガの予防効果も期待できます。
◇アーサナは順番どおりに行なう
先述したとおり、アシュタンガヨガではポーズ(アーサナ)の順番が決まっています。この順番は、身体を段階的に整えながら解放できるように構成されたものです。
順番どおりに行なわなければ、身体に負担がかかりやすくなります。また、本来得られるはずの効果も薄れてしまうおそれがあるので、必ず順番どおりに行ないましょう。
◇満月、新月は練習を行なわない
アシュタンガヨガには「心身のエネルギーは月の満ち欠けの影響を受ける」という考えがあります。エネルギーが強く安定しない満月や、エネルギーが低く無気力になりやすい新月には、ケガのリスクが高くなるといわれています。
そのため、満月や新月には練習を休むのが、アシュタンガヨガの伝統的な教えです。
◇月経1~3日目は練習をしない
月経期間は、特にホルモンバランスが乱れやすいとされています。この期間に、バンダを使いすぎたり全身を大きく動かしたりすると、身体への負担が大きくなります。月経1~3日目までのお休みは、多くのスクールで取り入れられているルールです。
上でご紹介したものは、まだまだごく一部です。
また、指導する人によっては異なるケースもあります。敬意を持ち、同じクラスを受ける人とうまく関係を築いてスムーズにアシュタンガヨガを学ぶためにも、どのようなルールがあるのか事前に確認しておくとよいでしょう。
アシュタンガヨガのプライマリーシリーズの実践手順
アシュタンガヨガのポーズは6段階に分かれ、それぞれポーズや呼吸の回数が決められています。そのなかでも、初心者向けとされているのが「プライマリーシリーズ」です。
ここでは、アシュタンガヨガのプライマリーシリーズの順番と初心者でも簡単なポーズをご紹介します。どれも小さいスペースで簡単にできるポーズなので、ぜひチャレンジしてみてください。
1. 太陽礼拝
まずは太陽礼拝のポーズです。アシュタンガヨガの準備体操部分にあたるので、手足の先まで意識してポーズをしましょう。AとBがあるので、3~5回ずつ行ないます。
2. 立ち位のポーズ
立ち位のポーズは全部で13種類ありますが、初心者でも簡単に実践できるのは以下の4つです。
● パダングシュタアサナ:前屈し足の親指をつかむポーズ
● ウッティタ・トリコナーサナ:三角のポーズ
● ウトゥカターサナ:チェアポーズ
● ヴィラバドラアサナ:英雄のポーズ
身体全体を使ってポーズを取ることを意識すると、すぐに身体が温まって汗が出てきます。
3. 座位のポーズ
座位のポーズは全部で22種類ですが、初心者でも簡単に実践できるのは以下の3つです。
● パスチマッタナアサナ:西向き前屈のポーズ
● ナヴァーサナ:舟のポーズ
● セツ・バンダーサナ:太鼓判のポーズ
簡単そうに見えても、美しく維持するには筋力が必要です。できるだけ手足の先まで伸ばすことを意識しましょう。
4. 終わりのポーズ
終わりのポーズは全部で13種類ありますが、初心者でも簡単に実践できるのは以下の3つです。
● 肩立ちのポーズ
● 胎児のポーズ
● ウトゥプルテ
上がった息を整えるように、ゆっくりと呼吸しながら行ないましょう。
ここでご紹介したポーズに慣れてきたら、徐々にできるポーズを増やしてみてください。一度にすべてをこなそうとすると、続かなくなったり身体を痛めてしまったりする原因になります。無理せず、少しずつチャレンジしていくことが重要です。
まとめ
ヨガの伝統的な流派の一つであるアシュタンガヨガは、身体をダイナミックに動かす運動量の多いヨガです。考え方や礼儀などをまとめた八支則をもとに行なうのが特徴で、身体はもちろん、心にも良い影響を与えます。
ハードなポーズもあるため、最初は難しく感じるかもしれませんが、ご紹介したポーズから練習を始めてみてください。練習を通して筋力や柔軟性がアップすれば、難度の高いポーズもできるようになります。
アシュタンガヨガで、自分の成長や変化を楽しみましょう。
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